矯正歯科治療中に起こりうるリスクと限界について
矯正歯科治療を進めていくためには、患者さんによるご協力と治療に関する知識が大切です。それにより良い過程と結果を生むことになりますので、体の治療と同じようにいくつかのリスク及び限界があることを認識しておく必要があります。
1. 歯痛
装置装着後、当日から7日間程度(特に食事の際)歯痛を感じることがありますが歯が動く正常な反応なので心配ありません。
症状によっては鎮痛剤を服用していただきますが、通常 痛みは時間経過と共に消失していきます。長期間に及ぶ場合はお申し出下さい。
2. むし歯・歯周病・脱灰(初期むし歯)
治療期間中は出来るだけ間食を避けて食後の歯磨きを忘れずに行って下さい。
プラークを取り除き口腔衛生を心掛けて、大切な歯を失う原因を作らないように心掛けましょう。
治療中に虫歯や歯周病が見つかった場合は、装置を外して専門医にて治療していただくことがあります。場合によっては治療期間が延びてしまいますので、口腔衛生管理は徹底して行なっていきます。
3. 口内炎
頬粘膜・口唇・舌などにできることがあります。お渡しする塗り薬や装置をカバーするワックスで対処して下さい。
塗り薬やワックスが不足、または症状が悪化した場合はお申し出下さい。
4. 発音障害
裏側からの治療や床装置使用の際、サ行・タ行・ラ行が話しづらくなります。期間は様々ですが程なく慣れますのでご安心下さい。
5. 歯肉退縮・ブラックトライアングル
特に歯周病や何らかの原因で歯肉が下がっている方は、歯を動かすことでさらに歯肉が下がり歯根が露出することがあります。
また、歯の形にもよりますが、重なっていた歯がきれいに並んでくると歯肉と両隣の歯との間に三角形の隙間(ブラックトライアングル)ができることがあります。
これは歯肉が下がったように見えますが、実際は正常な歯並びなので問題ありません。
6. 歯髄炎
歯の移動中、様々な原因により歯の神経がしみるように痛むことがあります。
通常数日で治まりますが長期に渡る場合はご相談ください。
また、しみるような症状は他にも原因がありますし、状態によってはごくまれに歯が失活し、変色することがありますので気になる方はお申し出ください。
7. 歯根吸収
治療中に歯根が短くなることがありますが、健康な条件下で起こる場合には何の問題もありません。
ただし、口腔衛生が充分に行われずに歯周病を引き起こした時には歯の寿命に影響することがあります。
8. 顎関節症
すべてのケースで起こるわけではありませんが、治療の内容や過程で、開口障害・頭痛・耳鳴り・筋の硬直などが生じることがあります。
顎関節症と矯正治療との相関性はないとされていますし、肩こりや姿勢、ストレスなどで発症することもあります。状態によっては専門医をご紹介します。
9. 顎の外科処置
上下の顎のズレあるいは成長に伴う顎の不調和、また治療中の協力が得られない場合には、矯正歯科治療のみでは治療不可能なので外科処置を併用することがあります。その場合は専門医(口腔外科)にご依頼します。
また、保険適用を選択なさった患者さんは他の矯正歯科専門医院をご紹介します。
10. 歯の咬耗とエナメルクラック
装置装着後、装置と歯が一時的に強く接触することがあり、まれに歯の一部が磨り減ってしまうことがあります。
治療中または装置除去時、歯の表面のエナメル質にクラックと呼ばれる小さな亀裂が生じることがあります。これは食事や咬み締めなど様々な原因で日常生活においても起こるものです。ほとんどの場合は症状がなく治療の必要もありません。
11. 抜歯について
当院では可能な限り非抜歯での治療をして行っております。 しかし歯と顎のバランスが取れない場合は抜歯による治療を選択することもあります。その場合は処置歯や問題のある歯を抜歯するように考慮いたしますが、やむを得ず健全歯を抜歯することもあります。
また治療に支障をきたす場合、まだ萠出していない「親知らず」を抜歯すこと事があります。抜歯は専門医にご依頼します。
12. 治療の限界
まれに歯と骨が癒着していることがあります。治療に必要な場合は専門医で歯と骨を引き剥がす処置をしていただく場合があります。
骨格の不調和や歯の大きさの違いから、顔のゆがみを治したり、完璧な咬み合わせを作る事ができない場合があります。また顎口腔機能に悪影響を及ぼすと判断された場合ご希望にそえないこともあります。
13. 治療期間
歯の動くスピードには個人差があるため、治療期間が予定より変更されることがあります。また、治療期間は患者さんの協力度によっても変わってきます。
14. 後戻り
治療後、歯は元の位置に戻ろうとする傾向があります。
そのため、装置除去後にリテーナー(保定装置)で後戻りを最小限に抑えます。リテーナーはキレイな歯並びを保つためにとても大切です。 使用方法や時間については保定開始時に再度ご説明しますので必ず指示に従ってください。
保定装置を使用しても顎の成長異常・歯周病・舌や口唇の癖・鼻咽喉疾患などによる口呼吸や歯ぎしりなどにより後戻りが生じることがあります。
当院では保定観察期間を2~3年設けていますが、その後全く後戻りをしないということではありません。そのため当院では保定観察期間終了後もリテーナーの使用継続をお勧めします。
また、治療の基準を高いところに置き、ケースによっては後戻りに対して「オーバーコレクト」という便宜を図ります。
*その他、治療に関してのご質問等は歯科医師ならびにスタッフにご相談ください。
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それが矯正歯科治療の役割です。患者さんとご家族、そして私達スタッフ、その全員の協力や努力があってこそ、それはもたらされます。一緒に頑張っていきましょう☆